今はひょっとしてもうないかもしれない本吉町の民宿。
あれは、多分夏。
民宿のおばちゃんがこう言ったのだ。
『魚屋さんがマンボウ持って来たって。』
「えーっっ?見たい見た~い。」
急いで軒先に出る私。
駆けつけた先には。
マンボウの肉片がみっちり詰まった発泡スチロールの箱。
ところどころ肉片の色が違う。
黄色っぽいのは、多分、肝だ。
あとは黒っぽかったり腸だったり・・・。
なんていうかね。
京極夏彦の魍魎の匣で、犯人の隠れ家に潜入した刑事がそこに積まれてる匣を開けたら、少女の遺体がみっちりと。な感じでしたよ。
心象風景は。
マンボウの顔は入ってなかったし。
「ほう。」
とは言いませんでしたがね。
『マンボウ、1匹まんま持ってくるわけねっちゃー。誰あんなデカイの1匹買うっけなー(笑)』
・・・まあ、そうなんだけど。
そもそも“マンボウが好き”なのにわざわざ遺体を見に行った自分の心理状態が解らないわー。
その夜、晩御飯に出たマンボウは、まあ、美味しくはなかった。
マンボウは、美味しくないからね。
泳ぐ気ないのでなんとなく漂っていて、網に入ってるという、
別に漁師も狙ってない素敵魚マンボウ。
口にクラゲが入ってくれば、喰う。というやる気のない食生活。
運動しないから筋肉も発達しないため、しまりの全くないただただ水っぽい身。
美味い要素がないんだよね。
水族館のマンボウは、
“壁にぶつかって死ぬ”という理由でビニールで保護され。
餌はイカと甘エビをすりつぶした団子。
しかも口に入れてやらんと喰わない。
という手間と金が掛かる存在だ。
でも可愛いから、許すけどね。
外敵から子供を守る気も一切なく、とりあえず3億程生んでばらまきます。
何個か生き残るだろうという割り切った人生観が素敵です。
巨大マンボウになると卵巣が20Kgオーバーとかあるらしい。
さすがに卵巣なら味は濃厚で美味いのだろうか・・・?
そんな彼らの魚生に思いを馳せながら、カラオケに行くと、私は歌うのです。
「何故だろう?家の裏でマンボウが死んでる~♪」
初めてカラオケでタイトルを見た時には、作者は何を考えてるんだ?と思いましたが、必死で覚えましたよ。
キー高すぎて歌えないけどねっっ!!